由緒

塩屋王子神社の由緒

sioya社紋  01-008

1.美人王子と謂われる

『日本書紀』天平12(740)年正月戊子朔の条「天皇御大極受賀、渤(ぼつ)海(かい)郡使新羅学語等同亦(えき)在列、但奉翳(ほうえい)美(び)人(じん)更著袍(ほう)袴(こ)」 という記事から出発した直木孝次郎の研究成果の一部である。文中にある「奉翳(ほうえい)美人」の「美人」は美しい女の意味ではなく、中国の女官の職名らしい。「中国の官職制の知識によって文章を飾ったものと思われる。」と直木は書いている。それが日本に伝わり、奈良時代にいう「美人」とは綺麗に着飾った高貴な方・皇族を指したようです。

2.社紋が二つ巴である
神社の紋(神紋)は三つ巴と決めつける人が圧倒的であるが、特に格式のある神社や寺は固有の紋を持っている。塩屋王子神社と聖徳太子をお祀りしている明日香の橘寺の紋瓦が二つ巴で同じである。それは、用明天皇の御子・聖徳太子と用明天皇の孫に当たる高向王の子・塩屋の建皇子 は同族なので、当然、同じ二つ巴の紋を使っている。尚、当地方では美浜町の岬神社も二つ巴である。
3.社の向きが西向きである
大体の神社本殿の向きは南向きであるが、塩屋王子神社は西向きである。元来、塩屋王子神社は紀氏と深い関係があり、海や海人の守り神としてこの地に創建された。ご神木の「ナギの木」も西(海側)を向いて残っている。(現在のナギの木は植えかえられている)紀氏の祖先である出雲の出雲大社も祭壇は西を向いている。このことから、古来の塩屋王子神社の主神は、「大国主神」であったのではないだろうか。
4.神像が祀られている
現代、祭神は天照大神でその神像が祀られていると伝えられる、日本に仏教が伝えられ、それまでの日本古来の宗教(神教)集合された。いわゆる神仏習合である。従って神社のご神体として仏像に変わる神像が祀られるようになった。熊野三神社を通称熊野権現と呼ばれるのが神仏習合の名残である、熊野詣でが盛んになるに連れ参詣道には王子神社が整備され九十九王子と称するに至った。大部分の王子神社には金剛童子が祀られているが、塩屋王子神社は天照大神(本地仏 大日如来)で格式は一番高いとされている。尚、五体王子と称するのは五体の神像を祀っている王子神社のことである。
5.社域が広い(広かった)
かつては現社域の十倍程の面積を有していたが明治になって民間に払い下げられた。この広さは大社クラスで歴史に見えぬ隆盛が偲ばれる。
6.祭の御神儀に次の特徴がある
・矛の柄に四神が描かれている
・衣笠頂部に飾りがない
・毛槍(羽槍)や星座がある
四神は古代中国宗教の原点で青龍・白虎・朱雀・玄武で東西南北の守神を表し、その中心を北極星すなわち天(天王・天皇)とし、高松塚古墳、キトラ古墳の壁画にその形態が見られる。昔朝廷では元日の朝賀や即位礼などに大極殿または紫宸殿の庭に四神旗又は四神矛をたて威儀を整えたのである。
衣笠は各神社に見られるが大体頂部には、榊、松、幣が飾られているが塩屋王子神社の衣笠には何も飾られていない。何を飾っていたか何時のころより廃止したかは不明である。
毛槍(羽槍)は他の神社では見受けられない、矛 衣笠 毛槍等他の神社では見られない祭のお道具が当神社に継承されており、高松塚古墳を構築する時代に高貴な御方を祭神としていたならば、当神社の由緒は相当なものである。

皇極天皇
(和風諡号 天豊財重日足姫天皇 あめのとよたからいかしひたらしひめのすめらみこと)(642~645) 3年5ヶ月 斉明天皇  皇極天皇重祚
皇極天皇は推古2年(594)茅渟王(ちぬのおおきみ)を父に、吉備姫王(きびつひめのおおきみ)を母として生まれ、本名を宝(財)皇女(たからのひめみこ)といった、但しソウル大学発行の『日本上古史』では財皇女を百済皇女としている、
茅渟王:敏達天皇の孫で母は大俣王(漢皇女)百済人(本朝皇胤紹運録)
吉備姫王(きびつひめのおおきみ)欽明天皇
美 人
広辞苑では顔・姿の美しい女の他に漢時代の宮女の官名虹の異称常に敬慕する君主又は聖賢とある。また、「日本書紀」天平12(740)年正月戊子朔の条「天皇御極殿受賀、渤海郡使新羅学語等同在列、但奉翳美人更著袍袴」という記事から出発した直木孝次郎氏の研究の一部に、文中にある「美人」とは、美しい女の意味ではなく、中国の女官の職名らしい。「中国の官職制のよって文章を飾ったものと思われる」と書いている(高松塚壁画の新研究 奈良国立文化財研究所飛鳥資料館)
紀伊続風土記
文化3年(1806)から33年の歳月をかけ仁井田好古が総裁
紀伊国名所図絵(18巻)
寛政8年(1796)から55年かけ一・二編は書物屋高市志友、三編と後編は国学者の加納諸平らによって編纂された(熊野編は昭和十八年) 和歌山県史原始・古代 安藤精一
神 仏 習 合
権  現   仏が化身して日本の神々となって現れること
垂  迹   仏や菩薩が衆生を救うために、仮に日本の神々になって現れること
本  地   物の本源、本来の姿(仏や菩薩の本来の姿)
本地垂迹   本源としての仏や菩薩が、人間を利益し、衆生を救うために、迹を諸方に垂れ、      神となって形を現す垂迹の結果として出現した神が権現
祇園社     天神・婆梨・八王寺  (牛頭天王と眷属神)
神仏習合p-146(寺門僧記補録) より
・本宮大社  阿弥陀如来
・速玉大社  薬師如来
・那智大社  千手観音菩薩
・塩屋王子  大日如来 (天照大神)
・伊勢神宮  大日如来 (天照大神)
・湯峰王子(湯峰金剛童子)虚空蔵菩薩
・発心門王子(発心金剛童子)大白衣
・近露王子(近津湯金剛童子)精進波羅密菩薩
・滝尻王子(瀧尻金剛童子)不空羂策観音
・切目王子(切目金剛童子)十一面観音菩薩
・藤代王子(藤代大悲心王童子)千手観音菩薩